九州大学 農学研究院の 清水邦義先生 の講義に参加しました。
テーマは「自然素材の可能性とサステナブル社会」。専門的な研究内容を、私たちの日常にもつながる視点でお話しくださり、とても心に残る時間になりました。
捨てられるものの中に宝物がある
先生の研究「未利用資源」に光を当てるものが多く紹介されました。
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オリーブの種子残渣
オイルを搾ったあとの種子は通常は廃棄されますが、そこに「ヌエゼイド」という成分が眠っていることを発見。コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促し、シワや弾力改善に有効であることがわかり、化粧品原料として新しい可能性を生み出しています。
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パンの木(パパ・ニューギニア)
ランダムスクリーニングで調べたところ、美白効果のあるチロシナーゼ阻害活性が高いことを発見。現在は世界中で化粧品原料として利用されています。
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竹の表皮(福岡県八女市)
部位ごとに分析した結果、表皮に強力な美白活性と保湿成分が豊富に含まれていることを確認。「やめかぐや」という地域ブランドにも展開されています。
「捨てられるものの中にこそ宝物がある」——そんな視点が、研究の随所に込められていました。
香りの科学
もうひとつ面白かったのは「香り」の話。
これまで“癒し”のイメージが強かった香りを、科学的に測定して効果を明らかにしています。
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ヒノキやモミの成分「酢酸ボルニル」 → リラックス・睡眠導入効果
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ベチバーや月桂樹の香り → 覚醒・集中力持続
自動車会社との共同研究では、長時間運転時の集中力を香りでサポートする試みも行われているそうです。今後は「会議前の香り」「就寝前の香り」といった用途別の製品が科学的エビデンスに基づいて登場するかもしれません。
TANE全身シャンプーバーとの共鳴
私はこの講義を聞きながら、ずっと 自社の「TANE全身シャンプーバー」 のことを思い浮かべていました。
TANEは、利島で収穫される椿の種の「搾りかす(残渣)」をアップサイクルして活用している製品です。これまで捨てられていたものに新しい価値を与え、人にも地球にも優しいかたちで届ける。
それはまさに、清水先生が研究で語られていた「捨てられるものの中に宝物を見つける」という思想と重なります。
研究者の方々も、私たちと同じように「自然の恵みを無駄にしない」視点から取り組まれている。そのことがとても嬉しく、心強く感じました。
椿の種の可能性をさらに深掘り
そこで、もう少し椿の種の可能性について深掘りする相談をさせていただきたいとお願いして、利島農協の加藤さんと一緒に、清水先生のご意見を伺うオンラインミーティングの機会を得ました。
質問攻めにして時間オーバーしてしまうという図々しさ…すみません
お忙しい中貴重なお時間いただき、本当にありがとうございました!
やっぱり椿の種はすごい
椿油は椿の種から絞られるのですが、1つの種から絞れる油はごくわずか。CHANTでも椿の種絞り体験のワークショップをしますが、みなさん「こんなに少ししか採れないんですね。だから高級なんですね」と驚かれます。
<椿の搾油体験ワークショップの様子>
近年の研究では、椿のタネのかすには「サポニン」や「ポリフェノール」と呼ばれる成分が少量ながら濃く含まれていることが分かってきています。
これらの成分は、油よりも種の残りのほうに多く含まれるため、効果が数値で証明されれば、これまで捨てられてしまうことの多かった種の残渣が、あらたな産業リソースになり、ごみを減らすことと同時に地域振興にもつながるという、まさにエシカル(倫理的で持続可能)な取り組み!
どのようなプロセスを通じてその有効成分を抽出して試験していくのか等、知らなかったことがたくさん勉強できて、今後の可能性にワクワクしました。
もし何か私のできることがあれば協力させていただきたいと思っています。
日本が誇るヤブツバキの種のチカラが、研究を通じてさらに可視化されて多くの人に届くようになってくることを期待しています。
清水 邦義 先生について
九州大学 農学研究院/大学院 生物資源環境科学府
研究領域:天然物・森林生物資源からの機能性成分探索とその社会実装 、香り成分の人の生理・心理応答評価 、化粧品、アロマ、機能性食品、住環境・建材などへの応用研究